一人の患者そして医師としての想い一人の患者そして医師としての想い

一人の患者そして医師としての想い

私も患者さんと同じく、顎関節症に悩む一人の患者でした。

私の顎に自覚症状があらわれたのは、今から約30年前でした。最初は口を開けるたびに「じゃりじゃり」と音がし始めました。時間の経過とともに今度は「ボキボキ」という音に変化しました。痛みは無かったものの顎の音に違和感を感じ知り合いの歯科医師に相談したり、大学病院の口腔外科を受診しましたが、どこに行っても「時間が経てば治る」とか「湿布をしておけば良い」であったり、「何もする必要が無い」とまで言われたこともあります。

最初に治療を受けたのは大学病院でしたが、症状は改善せず、またのちには細菌感染により根管治療をすることとなりました。
今、改めて考えてみるとラバーダムなしの治療だったのがその原因だったのではないか感じています。その後、別の歯科医院で口腔外科の手術を受けましたが、最終的には抜歯となり、別の歯も破折を起こしてしまいました。
勿論、これは病院や医師の技量だけではなく、私が治療を受けた30年以上前の技術や材料が現在よりも劣っていたことにも原因があると思います。

しかしながら治療を受けた当時、すでに歯科医師であった私でさえもこのような経験をしているということは、一般の患者さんにおいて良い歯科医師を探すことは、なかなか厳しいことではないでしょうか。

症状があるのだから原因があるはずです。自分自身の顎関節症がきっかけとなり専門書を読み漁り、インターネットを探し回りました。今では顎関節症治療への理解を私も深めましたが、当時は情報もなく歯科医師の私自身が非常に悩んだことを鮮明に覚えています。
顎関節治療で有名な歯科医師を訪ね歩き治療しましたが、結果は思わしいものではありませんでした。ある歯科専門誌で顎関節症の講演がアメリカであると知り視点を変えてみようと、迷わずサンフランシスコで行われる顎関節症の講演会に参加しました。それまで日本の講演会にしか参加したことがなかった私は、講演会の雰囲気やアメリカの歯科医師の情熱に日本のそれとは全く違うという印象を受けました。また、今でも日本では顎関節症治療で歯を削ってはいけないというガイドラインがあります。しかしある条件を満たし、正確に評価できる環境下であれば歯を削って調整をした方が有意義に結果に繋がるというのが講演の内容も、驚きでした。

その講演会で知り合った日系アメリカ人の歯科医師と顎関節症の話しで意気投合し、結局、その歯科医師に治療してもらい私の顎関節症は改善しました。
名取歯科医院では、現在ドーソンの咬合論をベースに、デジタルによる見える化で噛み合わせ治療を進化させた NICK YIANNIOS (ニック ヤニオス) による咬合論に基づいて顎関節症治療にあたっています。
アーカンソー州で診療をおこなっているニックのもとには世界中から、顎関節に悩む患者が診療に訪れています。

こうして院長である私自身が顎関節症の患者として30年苦しみ、歯科医として多くの臨床家、専門医の門を叩いても症状が改善せずに悩み、苦しんできた経験から、名取歯科医院では顎関節症治療において診療ガイドラインを定めるとともに、常に新しい技術や素材について知識を得ることを心がけています。

そしてどのような治療法が患者さんに対してよりよい治療であるのかを考えていくことが、患者さんにとって、より良い歯科医師、歯科医院であり続けるために大切なことだと考えています。