患者さんは20代の女性で、顎関節症による痛みで口が開かないということで来院されました。いわゆる開口障害という状況でお食事もお辛い症状でした。デンタルドックによる精密検査の結果、パイパーの顎関節分類から “4A” と診断しました。DTR Therapy (咬合調整による顎関節症治療)よって歯学的に歯の接触と力をコントロールし、その後ペインクリニックでのブロック注射を併用し神経学的な痛みのコントールのうえで顎関節症治療を終えました。
治療ステップ
初診時
顎関節症による痛みで口が開かないということで来院されました。いわゆる開口障害という状況で、ミニトマトくらいの大きさのものを食べる際も辛いという主訴でした。お口のなかを拝見すると奥歯にダメージを多く受けておられ、これまで他院で数々の治療をされてきたことが解ります。特に上顎左側は欠損歯も多く咬合崩壊といえる状況です。
精密検査・治療計画
デジタルレントゲン、また歯科用CTでは奥歯(臼歯部)の欠損だけでなく、顎の骨も減少しており、さらにMRIの撮影データでは、左顎関節(の関節円板)周囲に水が溜まっていることがわかります。顎関節症としてはパイパーの顎関節分類 “4A” と診断しました。まず顎関節の炎症を抑え、そのうえで DTR Therapy (咬合調整による顎関節症治療)をおこなう治療計画としました。
炎症の沈静化と筋肉の過緊張の緩和処置
炎症を伴った滲出が認められた顎関節に対して抗炎症剤を処方すると同時に、同時にアクアライザーをお渡しして1週間の経過観察と致しました。アクアライザーは流体力学スプリントとも呼ばれるもので、ちょうど氷嚢(水まくら)のように水を封じ込めたマウスピースで、症状を経過観察するために一時的に使用します。
歯が直接擦り合うことを防止し顎関節に掛かる負担を軽減すると同時に、咬筋をふくめたお口の開け閉めに係わる顔の筋肉の緊張を和らげる機能を持っています。
DTR Therapy (咬合調整による顎関節治療)
名取歯科医院でおこなっているDTR Therapy (咬合調整による顎関節症治療)は、デジタルによるデータ計測と診査診断に基づいた咬合調整が中心となります。とくに歯の不必要な接触を整える咬合調整では一般的な咬合紙(赤と青のリボン紙)ではなく、咬合力をセンサーで計測しデジタルデータとして記録する「Tスキャン」という専用の機器を使用して治療します。
この動画では初診時、特に前歯の部分に大きくでていた赤いグラフ線がほぼ無くなっていることがお分かりになるとおもいます。もちろん健康な歯質は最大限残すことが大前提ですから、削るといっても数ミクロン単位での精密な調整を繰り返します。
この結果、初診時よりお口の開く大きさ(開口量)が大きくなっていることもお分かり頂けると思います。
神経ブロック注射による補完的治療
DTR Therapy (咬合調整による顎関節症治療)によって改善をみましたが、より開口量を大きくして快適にお食事ができるように追加処置として、ペインクリニックの紹介と専門医師による神経ブロック注射をおこないました。
顎関節症は主に3つの原因にわけることができます。一つは歯の不必要な接触にともなう筋肉の緊張 (過緊張)、一つは顎関節にある関節円盤(顎の軟骨)の脱離、そして神経支配領域(歯科では交感神経・三叉神経など)の不調です。
この患者さんは DTR Therapy (咬合調整による顎関節症治療) によって、筋肉の過緊張は解消されていたこと。デンタルドックの MRI 検査によって体液の滲出と炎症こそみられたものの、関節円板の脱離までは進行していなかったことから、残る神経の不調を予測し患者さんに承諾を頂いたうえで栃木県上三川町にあるペインクリニック「本郷台医院」にて、神経ブロック注射を補完的におこないました。
お口を開きにくくしていた神経の作用をブロックしたことにより、この動画のとおり大きくお口を開けることができました。痛みや引っかかりなどの不快症状もなくなり現在、顎関節の状態は安定しています。
名取歯科医院では歯科領域を越える医科領域において、このように院長が選択した信頼のおける医療機関と連携することで、診療科目の垣根をこえた縦割りとならない患者さん主体の歯科治療を提供しています。
治療費
デンタルタルドック | ¥55,000 |
DTR Therapy | ¥165,000 |
合計 | ¥220,000 |
症例紹介について
治療費について
すべての治療が保険外診療となります。価格と税率は治療当時のものとなります。治療前にデンタルドック(55,000円)が必要です。また提携先の医療機関でおこなう検査や治療費は別途、現地でのご負担となります。
治療リスクについて
治療中に一時的な咬合痛や冷温水痛、若干の歯肉の腫れ、発赤などを生じることがあります。また仮歯の時期には仮歯の脱離や破損の可能性、舌感などに違和感を感じることがありますが、本歯に移行するまでに通常消失します。
※すべて症例による違いや個人差があります。
掲載写真について
すべて名取歯科医院での臨床写真で、見た目を変える画像加工は行っておりません。またメーカーや学会誌からの転用はございません。掲載写真は実際に治療を行った患者さんの同意を得て、治療を検討する方への情報提供と啓発を目的として公開しています。